すべては傷つけない為に

もしもサイヤ人が月を見ても猿にならずにただ単に凶暴化するだけだったら？的なパラレル。

セル飯で前半少しグロいです。注意。

肩からとめどなく血が流れる。
肩からというのには語弊があるかもしれない。肩のあったところには肉はおろか骨すらないのだから。
「(はぁ…はぁ…思ったより深く抉られたな…。)」
足はまだ付いている。動ける。
だけど逃げない。逃げたら…
「血ィ…血を…」
血を欲して飛びかかってくる悟飯。
まっすぐ突っ込んでくる彼に対してセルはかわすことも迎え撃つこともしなかった。
「はぁ…はぁ…血…血…！」
夢中でセルの肩だった部分にむしゃぶりつく。
体中の血液全てを吸いつくさんばかりに貪る悟飯。
「(これ以上出したらまずいな…。)」
意識が朦朧としてきた。
それでも悟飯の食欲は止まらない。
セルはただひたすら悟飯の体を抱き続けた。
他にどうすることもできなかったから。
「(くっ…完全体の私が…っ！)」
頭が揺れる。
生きている実感が持てなくなってきた。
それでもその腕はしっかりと悟飯を抱いている。
「(どんな姿でも悟飯は悟飯だ。私は拒まん。)」
かわすことも、迎え撃つこともしなかったのはひとえに彼への愛がそうさせたから。
拒まれることの辛さは身にしみていた。
だから拒みたくなかった。自分がどうなろうとも。
「(しかし、もう少し優しくお願いしたいがな…)」
冗談を言って気を紛らわせようとするが、限界は近かった。
再生することを視野に入れた方がいいのではないかと考え始めたその時、
「…？」
温かいものが伝った。
腕の中にいる小さな体が震えていた。
「ごめ…んなさ…いっ…」
身を震わせながら許しを乞う。
「生きているからな、何も問題はない。それより、お前の涙が傷に染みるぞ。」
笑いながら「泣きやめ。」と頭を撫でてやる。
「ほん…と…ごめん…なさ…い！」
セルに諭されたとおり両手で涙を拭う。
「ほら、口が血だらけだぞ。拭いてやるからタオルを取ってこい。」
悟飯は首を横に振る。
「でも…まずは肩を…」
「お前がタオルを取ってくる間に治しておく。さっさと行け。」
悟飯はもう一度謝るとタオルを取りに駆けていった。

意識を肩に集中させ、力を入れる。
すると生々しい音を立てながら肩が再生された。
肩を軽く回してみる。きちんと回る。
「ふぅ、少し血が足りないが…動かなければ問題なさそうだ。」
手を握ったり開いたりしていると、タオルを持った悟飯が帰って来た。
開口一番、
「ごめんなさい…。」
先ほどから発せられるのは謝罪の言葉のみ。
そんな自責の念にかられている口を思いっきりタオルで拭ってやり、
「私はお前の口からそんな言葉は聞きたくないぞ。」
と慰める。
「じゃあ…、僕はなんて言ったら…」
謝る以外の言葉を今の悟飯は知らない。
そんな悟飯にセルは笑って
「そうだな…メロンちゃん好き好き愛してる！お嫁さんにして！とか…」
とふざけたことを言ってみる。
「僕、男だからお嫁さんにはなれないよ…。」
困惑する悟飯を引きよせ、そっと口付ける。
顔を真っ赤にして恥じらう彼の耳元でそっと囁く。
「知ってるさ。ただ、お前の口から聞きたい言葉を言ってみただけだ。」
「うっ…ん…」
セルは狼狽する姿に愛嬌を覚える。
悟飯は小さく深呼吸すると彼の耳元に顔を近づけ、
「メロンちゃん好き好き愛してる！お嫁さんにして！」
と叫ぶ。
それを聞いて満足そうに笑う彼に追い打ちをかけるかのように頬へ接吻してみせる。
「っ…！？」
思わぬ収穫にセルまで赤面する。
よろよろとセルから離れると恥ずかしそうに、
「お嫁さんは旦那さんのほっぺにちゅぅするんだよ…！僕のお母さんがお父さんにしてたもん。」
と微笑んで見せた。


＜あとがき＞
他で自重してるから他で自重できないのがセルさんだと思ってます。
どんだけお前は嫁が欲しいんだよと(たしかに子供いるのに嫁さんいないけどさ！)。